ずいぶん昔のことだけど、
精神科の重症入院患者病棟に行ったことがある。
厳重な扉の入口を何ヵ所か通り抜けて着いた先は
日常とは違う世界、そこに様々な人達がいた。
じっと一点を見詰めて呪文のような
意味不明な言葉をつぶやいてる人の後ろで
二人のおばさんがスリッパを奪いあってた。
一心不乱に本気で奪いあってた。
ずいぶん昔の話。
今もお偉いさんや政治家は奪いあってる。
奴等が奪いあってるスリッパは、
おばさんたちが奪いあってた、ただのスリッパじゃない。
利権、お金、原発…etc…いろんな物が詰まってる。
おばさんたちはスリッパを奪いあうだけで、
偉そうなことは言わない。
お偉いさんや政治家は奪いあいながら
立派なことを言う。
世のため人のため…
でも本当は自分の事だけしか考えていないのに、
たいそうなことを言う。
世界は何でもない日常を当たり前に暮らす人達が支えている。
総理大臣が何人変わっても、いつものように毎日は続いていく。
お偉いさんや政治家はスリッパを奪いあうでけで
何も変えられない。
僕はスリッパなんていらない。
当たり前なパンを焼く平凡な毎日。
でも、もしかしたらそんな当たり前な一日が少しずつ世界を変えているのかもしれない。
何でもない一日に今日もありがとう。